私が行政書士を目指したきっかけ。それは、「会社員失格」になったからでした。
私は、行政書士試験に合格する二年ほど前に、それまで勤めていた会社を辞めていました。
その会社は、今でいうところの「ブラック企業」のような会社で、私は中途入社だったのですが、退職するまでの八年間に、本当にたくさんの人が辞めていきました。
なかには、ある日突然会社に来なくなり、一時的に行方知れずになった人も、何人かいたくらいです。
そして私自身も、仕事のうえでの無理を重ねた結果、ほとんど「うつ状態」となってしまい、会社を辞めざるを得なくなってしまったのです。
ろくな貯えも無く会社を辞めた私は、家族を養うためにすぐにでも再就職する必要がありました。
けれども、一度こころがボロボロの状態になってしまった私は、「会社員」として再び働くことに対して、どこか心理的な恐怖と抵抗感を持つようになっていました。
何度か正社員での募集に応募しようとしてみましたが、どうしても気持ちのほうが拒否反応を起こしてしまうのです。
「会社員失格」 まさにそんな状態でした。
私は仕方なく派遣会社に登録をして、アルバイトで日銭を稼ぎながら、パート勤めの妻と一緒に、なんとか二人の幼い子どもを養っていくほかはありませんでした。
そのようなある日、近所の本屋でたまたま開いた資格紹介本のなかで目に留まったのが、「行政書士」という資格でした。
それまで、行政書士のことなどまったく知らなかった私でしたが、その本の中に書いてある「独立開業」という言葉に、どこかこころを惹かれるものを感じたのでした。
「独立開業、そんな生き方もあるのか・・・」
それまでの私が、考えてみたこともなかったような世界です。
その本を通じて「行政書士」という資格に興味を抱いた私は、思い切ってその年の試験にチャレンジしてみようと決意しました。
その結果、春先から勉強を開始した私は、運よく試験に合格し、開業に向けてのスタートを切ることができたのでした。
ただ、実際に「開業」するまでには随分と時間が掛かってしまったのですが、それはともかく、私が行政書士を目指そうと思ったきっかけ、それが「会社員失格」という、何とも情けない現実から始まったことだけは確かです。