行政書士開業 徒然日記

57歳で行政書士開業を決意した男のブログです

フランソワ・トリュフォー監督の『柔らかい肌』

最近なぜかCS放送フランソワ・トリュフォー監督の映画が立て続けに放送されていて、私はそのなかの一つである『柔らかい肌』(原題:La Peau douce)という映画を観ました。


トリュフォー監督と言えば、アントワーヌ・ドワネルを主人公にした自伝的な作品群が有名で、私もそちらの方には以前から親しんでいました。


ただ、この作品を観るのは初めてで、特に期待して観たわけではないのですが、思いがけず魅了されてしまいました。


「名作」でも「傑作」でもなく「名画」と呼ぶのがいかにも相応しい作品、それがこの『柔らかい肌』という映画の一番の特徴ではないかと思います。少なくとも私はそういう印象を受けました。


名声もあり家庭生活にも恵まれた一人の中年男が、若い女性とのふとした出会いをきっかけに破滅に向かっていく。


ストーリーも確かに刺激的なのですが、しかしそれ以上に映像と音楽、この二つがときおり息をのむような美しさを織り成していて、そこに私は最も魅かれるもの感じずにはいられませんでした。


逆に、「モノクロ」とはいえこの音楽と一体になった「映像美」があればこそストーリーにもより一層の説得力が生まれてくる、そういう作品になっているのではないかと思います。


こういう「映画」をこそ、是非映画館で観てみたい、私にとってはそう思わせてくれる作品でした。


音楽はジョルジュ・ドルリュー、撮影はラウール・クタール。どちらもトリュフォー監督の作品には常連の二人のようです。


蛇足ですが、この映画で若い恋人役を演じているのは、カトリーヌ・ドヌーヴの姉のフランソワーズ・ドルレアック。『ロシュフォールの恋人たち』で二人は共演していて、私はそちらのほうで印象に残っていたのですが、二十五歳の若さで亡くなっていたことを今回あらためて知りました。